羊飼いの青年は心優しい素直な子。宝石を司る妖精達はその様子を
魔法の水鏡からのぞいては楽しんでいた。
「ねぇ私達でこの子助けてあげない?」
妖精達は青年の前へと現れ、3つの不思議な石を手渡す。
青年に起こる様々な困難に、妖精達の力で危難を乗り越えていく。
最後に青年が手に入れるものとは……
人間視点ではなく、妖精視点で語られるおとぎ話です。
*絵を描いてくれた鯨かむさんのHPはリンクコーナーにあります。
私は民話好きなので、一度民話タイプの話を書いてみたいなと思って ました。絵を描いてもらった鯨かむさんの絵で可愛らしい妖精の絵が あったので、妖精の話にして絵を頼んでみようか?と思いました。
妖精というとイギリスの方かな。どうせ作るなら変わった作りに してみたいな、と思い、妖精視点から書いたらどうだろうか? というわけで普通の民話では主人公は青年ですが、この話では 妖精側から書いてみることにしました。
民話には色々なタイプがありますが、パターンみたいのもあるので そういうのは入れていきたいなと。ただ創作民話なので話的な面白さ も出したいな、という所で苦労しました。民話の特徴としては物凄く 簡潔に表現されるのですが、これは語り手や聞き手が脚色したり、 想像で補完することを見越してのことだと思います。逆に創作 の場合はそういうルール的なものを無視してしまって、盛り上げる ように書いても大丈夫。どちらよりに書くかは難しい問題でした。
面白い話にはしたいが、民話らしさも残したい。民話っぽい所は 何かしら3回ほど同じようなことを繰り返す、という部分を入れたり しました。話的な面白さの所では、お酒の場面での飲み比べで相手側 がぐてんぐてんになる様子を詳しく書いたりしました。ただこの部分 の民話の場合は「相手は酔いつぶれてしまいました。」と簡潔に 書いてる方が民話っぽく、この部分に関しては民話的ではない、 ということになります。どうしても書いていると面白く書きたく なってしまうのが困りものでした。
妖精達が人間を見て助けたくなる、となるとやはり好青年だろうなと。 良い行いをするものには助けがある、というのは納得できる理由 だと思います。なんで、妖精達が助けたくなるような青年にするように 話を組み立ててくことにしました。民話の場合、恐ろしい老婆や怪物 などに取り入って助けを得る場合もあるのですが、今回の話には向かない 設定なので止めときました。
話的には3人(人でいいのかな?)の妖精がそれぞれで青年を助けて 最終的に富を得る話となってます。3という数が多いのは、多くも少なく もない数であるから。傷を治したり、勇気を振り絞るのに3回繰り返される のもそういう理由です。もとより3という数が、聖なる数として世界各地 の話でたびたび出てきたりします。仏教の方ではマンダラで3×3の 9つの区画に区切ったりしてます。キリスト教だと三位一体もありますね。 今は3だと芸人さん の流行でもあるようですが。
最後の勇気を振り絞るためになんだかわからない恐怖に立ち向かう、 というのを表現するために、謎は謎のまま終わらせているのですが、 結局なんなの?と思われてるかもしれず失敗してるかな?と思ったり してます。恐怖はなんだか原因がわからないのが一番怖い、というのを 表現したかったのですが、もっとやりようもあったかなぁと。
妖精の女王とおばあさんは後から考えていれたもので、話の最終的な オチになればいいかなぁと。民話としてはちょっと欲張りすぎてる かもしれないですが、これはこれで良かった、かな?
何しろ妖精などは何冊か本など読んだりゲームなんかでもよくでてるので どうにかなるのですが、宝石の方はあまり詳しくなかったので調べながら となってました。色々悩みながらやったので、絵を描くのは大変だったかも しれません。無理な注文にも答えてもらえた鯨かむさんには感謝です。
妖精からの視点、というのは難しかったですが、また3人の妖精の別な話 も書けたらいいなぁと思っています。