良家子女のひな子と資産家の息子の正一は互いに好意を寄せていた。
正一はひな子と結婚する約束をし、二人ともに幸せの時を過ごしていた。
しかし、運命の歯車は狂い出す。仕事の帰りが遅くなった正一は円タクに
乗って帰宅中に、あやまってひな子を轢いてしまう。怖くなった正一は
そのまま逃げてしまった。なぜ助けなかったのか。なぜ逃げ出したのか。
ひな子の無念が人形に宿り復讐をする。
怖くて哀しい昭和モダンホラーです。
てなわけで赤色哀歌です。このお話が生まれたきっかけは偶然とも
言えるかもしれません。前回のコミティア終了の後、忙しい安達君
と会えたので、またなんかやらかしてやりたいね、と話しが出て、じゃ
やろうか、となったのが今回のお話です。ネタ探しの為取材を一緒に
してる時に昭和初期の雰囲気が好き、と聞いたのでそれをイメージして
お話としています。私は漠然としかイメージ持ってなかったのですが
なんとなく哀しいイメージがあったりしました。戦争前の時代ですが
大正の大地震もあり復興と戦争の狭間な感じでしょうか。それと安達君
をイメージする色が赤色だったのでそのまんま題名になっています。
取材してる時昭和初期時代の家や、まだ走り始めたばかりのタクシー、
いわゆる円タクが展示されていたので興味を持ち、これを題材にして
みようと思いました。ただこの昭和初期という時代、なかなか資料が
なくて困ってしまいました。円タクについては当時の新聞などをまと
めた所があったのである程度はわかりました。本を探すにしても普通
に置いてあるのは昭和30〜40年頃。オールウェイズの映画の時代
のものは人気あるのかいろいろあるようですが、昭和初期のものは
ほとんどないようでした。もしかしたら明治、大正のがあるかもしれ
ない。江戸時代の方が資料豊富というのがなんとも困ってしまいました。
そんな近くて遠い時代の話となると、詳しく書くにも資料なし。
ならばあいまいな設定をいかせるような話にしてみようか?と
なり、昭和初期の雰囲気とは相性の良いホラーにしてみました。
ただホラーと言っても日本の怪談話みたいなどこか物悲しいもの
にしようかなというのはありました。結婚前の娘さんが事故で
亡くなる、そしてそれが婚約者と関わりがあって……というメイン
を決めて、その葛藤や心象を書いてくことにしました。後で言われて
気づいたのですが、実際書いてた時期にひき逃げ事故が多発してた
ので驚いたりしました。
その後映画のポニョなんかを見て、随分とメタファー、暗喩が豊富な
ものだった為、私もそういうのは好きな方ではあるので色々散りばめて
みました。もとから赤と白は結婚をイメージさせますし、彼岸をイメージ
させるものも色々あるので取り入れてみました。サギが飛んでいくという
のは結婚出来ない暗示、などなど。私の場合短い話が多いので、わかり
やすくするため余り入れたりはしなかったのですが、今回はその辺を
恐れず色々やってみました。成功したかどうかはわかんないけど。
名前は当時の人気のあったらしい名前からチョイスしています。
と言っても少しずれてるかもしれません、名前を統計的に取り出した
のが大正元年からだそうでそれ以前のものは無いようでした。
なので大正元年の人気の名前「正一」に。雛子は幼くはかない感じが
欲しいと思いこの名前としました。最初はひらがなでしたが、変換したまま
書いてたので漢字に変わってたりします。
例によってぎりぎりチョップな時間で活動してたりしました。もうちょい
余裕作ってやるべきと毎回思ってます、反省。わかってる人はわかると思い
ますが、安達君は第一回のレッドステイクの表紙を描いてもらいました。
またこうして別の作品で一緒に作れたことに感謝。また何かタイミングが
あえば一緒に作ってみたいな、と思っています。レッドステイクの話や、
この昭和初期を題材にしたお話もまだまだ書けるような気もしますし。
ちょこちょこと昭和初期の資料も探してみようかなと思っています。