スコットランドの水の妖精ケルピーを題材にした
ホラー小説。
優れた詩才を持つ盲目の詩人と村一番の美人。
二人はいつしか婚約し一緒に住むようになる。
村人達は祝福したが美人の姉の妹はそうではなかった。
詩人を虜にしたその美声をうらやむ。ある日近くの沼で
姉がケルピーに襲われるのを見た妹は……
というわけで暗黒妖精譚なんですが、妖精の本などを見ていると
かならずしも可愛い妖精だけではなく。日本で言う妖怪に近いものも多く
いるのがわかりました。中には悪意しか持ってなく、人に危害を加えることしか
しないものもあるとか。これらの妖精は子供をしかりつける時に使われたりも
するようです。いい子にしてないと悪い奴が来てさらわれてしまうんだよ、みたいな。
妖精は神話の時代の神が零落したものである、とも言われておりその出自は様々
あるようです。なので伝承の中では子供をしかるための妖精ではなく、本質から
危険な妖精と設定されてるものもありました。それらは副題についているアンシーリーコート
と呼ばれる存在です。スコットランドで呼ばれる悪い妖精の総称で良い方は頭のアン
がないシーリーコートと呼ばれるらしい。
世に出てる妖精ものの話というのは華やかで可愛いものが多いような気もします。
その一方で怖い妖精達もいるのもまた事実。フェアリー&フェアリーテイルズシリーズ
では前者のような良い妖精達をモデルにしてたので、悪い方も書いてみたいなと思ってました。
これを書く前に漫画家の箱宮ケイさんと話をする機会がありました。相方の秋月さん
の知り合いで色々面白い話をさせてもらいました。その中で私が変わった映画と言えば
「パンズ・ラビリンス」が面白かった、という話になったのですが、この映画マニアな
人でないと伝わらないだろうな、と思ったら箱宮さんも知ってたようでなんだか盛り上がって
しまいました。
「パンズ・ラビリンス」という映画は戦争で抑圧された少女が妖精というよりも妖怪に
近いもの達と関わりあって展開する話で少女の心の逃げ道として妖精達の世界が使われて
いました。
こういう話をした時に怖い話を書ききれない、という話もでました。書き手と言えども人間
ですので最後にはなんらかの救いを入れたくなるもの。事実私も飾緒語りでは暗めの話が
多いので明るい話も入れて均衡を取ろうとしてたように思います。
ならば一度怖い話を書ききってみるのもいいんではないか?と思いこのケルピーの話を
考え付いたのでした。救いがない、というよりも怪談話に近いものになってしまった
かもしれません。
話の筋はすぐにだいたい思いついたのですが、主人公その他、脇役をどうするかが
なかなか決まらず。名無しでいっそやってみるかと思ったのですが案外書きにくかったり
もするので、キャラ設定はきちんとしとくべきなのかもと思いました。怪談話風に思える
のはこの辺も関係あるんだろうか。怪談でお馴染みの稲川さんの「聞いた話なんですが」
系の話はキャラはそんなに説明されないような気もするし。
妖精話を書くために以前に妖精事典は読んでたのでネタに出来そうなのは何個かありそうだ
なと思ってました。ケルピーもそのうちのひとつでした。ただこの話を作る前に作ろうかな
と思っていた大黒猫の話があるのですが。妖精事典で読んだ、と思ってたらその妖精事典
には載っていませんでした。他に読んだものの中でも思い当たるものが無いので一体私は
大黒猫の話をどこで読んだのか?とちょっと呆然としたりもしました。これもちょっとした
ホラーなんでしょうか。いまだに何で見たか思い出せていません。
思い出せてないものの、どういうものかは覚えているので書いてみようかなと思ってます。
ケルピーなど水辺の危険な妖精というのは警告の意味もあるようです。足場の悪い水辺で
溺れたりしないよう不用意に近づかないように、と作られた妖精なのかもしれません。
また妖精の馬というのは人間の世界の馬よりも優れている、という話もあり。捕まえて
手綱をつけたり飼いならしたりすると希代の名馬となるとも言われてるそうです。
日本の妖怪もそうですが、妖精も死後の世界とも関連付けられています。人間の世界
と違うもの、ということで魅力的だが危険な世界である、とも言えます。リャナンシー
という妖精は詩人に詩作の才能とインスピレーションを与えると言われますが代償として
命を削られる、というのも死後の世界と関連付けられるひとつかと思います。
怖い話を書く、というのも結構難しいのでどうしたら良いのかを考えつつ色々試して
いければなと思っています。
漫画家 箱宮ケイさんの作品「できそこないの物語」は様々な魔法人形達が活躍する
面白い漫画です。シリウスの連載作品で全4巻。知り合いになったからおすすめする
というのではなく、純粋に私が面白いと思っています。魅力的なキャラと小気味良い
ストーリーがテンポよく展開されています。独特の箱宮ワールドを是非。
ブログ 箱宮ケイのおもちゃ箱
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